漆は、ウルシノキから採取される樹液です。一般的な塗料が、水分を蒸発させ〝乾く〟と言うのとは違い、空気中の水分と反応し硬化します。漆は一度乾燥(硬化)すると酸やアルカリ等の薬品類や、高熱にも耐える塗膜になります。また、極めて大きい接着力があるので、古来より接着剤として使われてきました。温度や湿度の調節により、乾燥(硬化)時間の管理ができ、塗面の研磨なども可能なため、蒔絵や螺鈿などを装飾した漆器の文化が発展しました。
漆自体は樹液なので色はついていません。そこに顔料を混ぜる事で朱色や赤、青、緑などの色を出すことができます。ただ、漆は酸化するにつれ褐色になる(時間の経過と共に漆は透けてきますが、、)為、発色の良いビビットな色は難しく、特に真っ白を表現する事はできません。反対に、一般的に漆黒と呼ばれる漆の黒色は、鉄分との化学変化で変化するため、混ぜ物がない深い黒になり、呂色(ろいろ)と言います。
漆で模様などを描き、乾かないうちに金粉や銀粉などの金属粉を蒔いて、漆の接着力で定着させる技法。金粉を蒔いた上から漆を塗り、模様を研ぎ出す(研ぎ出し蒔絵)や、模様を描いた上に蒔く(平蒔絵)、漆を何度か盛り上げてから蒔く(高蒔絵)事などで異なった表現が可能です。
貝殻の光る真珠層部分を漆の面に貼ったり、象嵌(ぞうがん)する技法。主に鮑や白蝶貝、夜光貝が使用されます。螺は貝、鈿は散りばめること。
主にウズラの卵を細かくして漆で貼る技法。漆は白色を表現することが難しく、卵の殻を使って表現する方法があります。
漆の主成分であるウルシオールと、皮膚のタンパク質が反応して痒みが出ます。この漆かぶれは、硬化していない生の漆を触ることによってほぼ全ての人に起こります。(山でウルシの木や葉っぱ触れてしまう。等)漆は乾燥(硬化)に時間がかかるため、完全に乾燥していなかった場合、漆器などでもかぶれる可能性があります。硬化が完全に完了している物ではかぶれることはほぼありません。不安な方は購入後、多湿な場所に1ヶ月ほど置いてから使用してください。(1年経たないと使えないとう稀なケースもあります。)
割れたり欠けた器を漆で貼り付け、最後に金粉等を蒔(ま)き、欠けた跡をあえて装飾し美とるす技法。